ワーナーブラザーズからの2作目のアルバム ”wish you were here"は、彼らの円熟した音楽的魅力が詰め込まれた傑作アルバムだったのですが、レコード会社とのトラブルにより、あまり日の目を見ることなく店頭から消え去りました。ワーナーとの契約でアルバム制作のノルマが課せられていたこともあり、前作の発売後まもなく、次作アルバム"Head first"を短期間で完成させましたが、レコード会社に発売を拒絶されました。 マネージャーがアルバム制作費としての支度金を横領した疑いがもたれたため、ワーナーは、"Badfinger"に関する商品の販売、発売を一切中止して、マネージャーとバンドに対して、訴訟を起こしました。1975年初頭には彼らのレコードは店頭から全て姿を消しました。
"No matter what", "day after day", "baby blue"と立て続けにヒット曲を放ち、更にニルソンがカヴァーした彼らのオリジナル曲without you"も世界各国でNo.1ヒットとなり1971年から72年にかけて素晴らしい成功の時期となりました。 しかしこの時期、Beatlesという経済観念の乏しいアーティスト達がオーナーであるアップルレコードの財政状態が悪化の一途を辿り、彼らのもとには印税が殆ど入らない上に、悪徳マネジャーに収入の大半をピン撥ねされていました。バンドのメンバーはこの時期に及んでも苦しい生活を強いられ、下積み時代と同じ借家に住んでいました。
前作の”straight up"から約2年以上のインターバルを経てリリースされたアルバム”Ass"は、セールスが芳しくありませんでした。アップルからリリースされたこのアルバムの他に、1974年には、移籍したワーナーから2枚のアルバムを立て続けに発表しました。ワーナーからの最初のアルバム"Bad finger"(邦題 涙の旅路)もセールスに失敗して、彼らの人気は、衰退の一途を辿っていました。この頃、マネージャーの金銭管理に対する不信感などを巡って、メンバーの対立、摩擦が顕在化して、Pete HamとJoey Mollandの二人は互いに入れ替わるように一時的にバンドを脱退しました。元のメンバーが揃ってレコーディングしたアルバム"Wish you are here"(邦題 素敵な君)がワーナーからの2作目として74年秋にリリースされました。しかし、マネージャーが起こしたレコード会社との金銭トラブルによりマネージャーとバンドが訴えられる事態となり、発売後直ぐに店頭から引き上げられ消されてしまいました。そんな訳でセールス的には最悪でしたが、このバンドの最高傑作と言われる程の出来栄えでした。
"No matter what"(邦題 嵐の恋)は、その頃ラジオで割と頻繁に流れていて洋楽を聴き始めた頃のお気に入りの曲の一つでした。この年(1971年)の夏、元BeatlesのGeorge Harrisonの呼びかけで開催されたバングラデシュの難民のためのチャリティーコンサートにエリック クラプトンなどの大物アーティストと共に参加しました。 その翌年、George Harrison がproduceした”Day after day"が大ヒット、同じ頃、彼らのオリジナル曲 "Without you"をニルソンがカヴァーした曲が世界中で大ヒットしました。(ちなみにこの曲はハート、エアサプライ、マライアキャリーなど多くのアーティストにカヴァーされ不朽の名曲とまで言われている。)その頃がこのバンドの人気の頂点で、ほんの数年後の悲劇は誰にも想像できませんでした。
1971年から72年にかけての時期は、"Bad finger"にとって成功の頂点でした。1971年8月、George Harrison, Eric Clapton, Bob Dylanなどの大物達のアシスタントとして、ニューヨークのマディソンスクエアガーデンで行われたバングラデシュのチャリティーコンサートに参加しました。GeorgeのソロアルバムやJohn Lennonのソロアルバム”イマジン”などのレコーディングにコーラスや演奏で参加し、Beatlesからも寵愛され、彼らは束の間の成功の喜びを噛みしめていました。1971年、代表作であるサードアルバム ”Straight up"を発表(日本では翌年発売)、彼らの最高のヒットソングとなった"Day after day"と"Baby blue"がシングルカットされました。筆者は、小学校を卒業する少し前、母親のおねだりして"Day after day"のシングル盤を買ってもらった事を昨日の事の様に懐かしく思い出します。
多くのBeatlesファンが、この頃のBad fingerを、解散してしまったBeatlesの代用品として見ていた様な気がします。Beatles的な事をやると、Beatlesの亜流といわれ、かといって、Beatlesのイメージから逸脱したこともできない........今、思うと、そこにこのバンドの方向性を模索する上での難しい問題があったのではと思います。 彼らがはかない成功の夢を実現させた1970年代の初頭の本国、イギリスでは、David Bowie, T Rex などの耽美的で先鋭的なグラムロックが台頭して来てBad fingerのような地味なバンドには、逆風に曝される時代になりつつありました。